『恋 文』

拝啓


 このようなものには意味はない。意味はないが、多少の益はあるかもしれないから、これを書く。

 僕はたぶん、気が広くも長くもない。むしろ狭いし短いほうだという自覚はしている。だから、もしかしたら、僕が怒っていることは一般的に見てとても些細なことなのかもしれないし、取るに足りない馬鹿馬鹿しいことなのかもしれない。そうだったら嫌だけど、でも、しょうがないと思う。

 怒っていると書いたけれど、本当は悲しかったのかもしれない。君が僕の目の前で女の子とどこかに行ってしまっても、僕には怒る権利なんかないし、第一怒る気なんかしない。でも、ちょっと泣くと思う。泣くっていうことはつまり、悲しいってことだから、やっぱり昨日は、悲しかったんだろう。
 でも悔し涙というのもあるらしいから、もしかしたら、僕は悔しかったんだろうか。

 あのとき、きっと、いやだと言って突っぱねればよかったんだろう。でも、それで自分で歩いて行くと言って置いて行かれたら、僕はすごく惨めだったと思う。惨めなのが嫌だったから、僕は送ったんだと思う。
 それに、嫌だって言う理由もなかったし、だから、あのとき送らないなんてすごく変なことだった。
 でもだからって送ったら送ったで、何してるのか気になるし、結局戻ってこなかったし、それはもちろん、別に、戻ってくるなんて思ってたわけじゃないけど、

 でも、僕が何を考えてようと、あんたには関係ないってわかってるけど、


 なんで、僕はこんなことを書いてるんだろう。何にもならないのに。
 別に何も、僕が口出しするようなことなんかないということは知っている。例え僕が何か言っても、あんたはそんなの聞かないということも知っている。

 あんたなんか、全然人のこと気にしてくれない。
 待ち合わせしてもすぐ忘れるし、この前だってずっと待ってたのに結局来なかった。そんなこと約束したときからわかってたけど。それから、厭な笑い方するし、人の部屋に入ってくるときノックしないし。
 紅茶入れても不味いって言うし、人の腰見て細いとか言うし、もっと太れとか言うし、だって我慢して甘いものいっぱい食べたけど、全然太らないんだから仕方ないじゃないか。
 あと、雨の日にいちいちずぶ濡れになって風邪引くし、移すし、時々変なことするし、トランに帰るとき声も掛けてくれないし、おくらは食べられないし、

 それでも僕は好きなのに、不公平だ。確かに僕は、かわいくないし、鬱陶しいし、柔らかくないし抱き心地悪いし、紅茶入れるの下手だし、体力ないし、他にもたくさんあるけど、それでもちょっとくらい、僕のこと好きになってもい