連続短編小説     それゆけジャッカス
   ジャッカスであろう日々 その3  炉端焼き「健」のお品書

 
 
 
 高御位のふもと。  ひろびろと広がる田んぼや畑、
 溜池が所々に点在し、のどかに続く田園風景。

  そんな中に、ひときわ大きくそびえたっているのが
 ジャッカス御殿こと・矢の川邸。 そのうらてに廻って
 あぜ道を少したどってゆくと、ポツリと二軒並んだ店が
 ある。 

  かたや、ご存知スナック・さゆり、いっぽうが炉端焼き
 「健」 である。  

  スナック・さゆりの評判は、いまや村中に広まり、近所の
 人はもちろんのこと、もはや身内も近寄ってこない。 
 まさに常連・ジャッカス私設の店と化している。 たまら
 ないのは隣の「健」だ。

  炉端でいっぱいやって、スナックで歌でも唄おうというのが
 お決まりのコースなのだが、繁華街と違いここに来ると
 どうしても隣のスナック・さゆりに行かなければならない。
 野中の二軒並び、お客に選ぶ権利はない。

  そんなこんなで、どうしても客足が遠のく。
  
  大将の健ちゃんは、ねじり鉢巻のよく似合う、いかにも
 大将という感じだし、厨房のおっちゃんは、知るひとぞ知る
 料理研究家。 店としては、かなりのハイ・レベルに
 達している。

  このままでは、われらジャッカス、少々申し訳ない。
 そこで今日は、この店のすばらしさを宣伝するため
 バラエティーに富んだ料理から、いくつかをご紹介しよう。

  
 1: ゾエリア       絶品。 この料理は他店の
                追従を許さない。 普通は
                パエリアというのだが、
                なぜかここではこう呼ばれる。

 2: ロースト・ビーフ   おっちゃんがその生涯を
                かけた逸品。 まさに無敵の味。
                コールマンのコンロで焼く
                こだわりがたまらない。

 3: 焼きそば       必ず作りすぎて、その量たるや
                はんぱじゃない。 おなかの減っ
                ているときは一押し。

 4: はげだし豆腐    器にたっぷりと入ったお汁、
                堂々たる厚みの揚げ。 その
                真中にゆで卵が置かれ、頭部に
                あるか、なきかのとろろ昆布が
                乗せてある。 なぜか食べていて
                哀愁を感じる、 おっちゃん入魂の
                一作。 (なお、この料理には
                ヤスキ風というのもあり、こちらは
                卵頭部のとろろが環上に仕上げ
                られている。)

 5: 完封         かんぴょうをベースにした料理ら
                しい。 というのは、この料理
                三年に一度あるかないかというのが
                テーマのため誰もまだお目にかかっ
                たことがない。

 6: パーフェクト    これはもう、生涯に一度という幻の品。
        ゲーム   それだけにこれに関する情報は一切ない。
               食べられた人は世界一、ラッキー。 

 7: 規子の       いろんな料理が入っているらしいのだが
      手作り弁当   なぜか、みんな一緒くたになっている。
                味はよい。

          以上、まだまだいっぱいあるのですが、それらは
         ぜひ一度、お店に来て、あなた自身が味わってみて
         ください。

            スナック・さゆり及び、常連・ジャッカス一同より。