連続短編小説   それゆけジャッカス
ジャッカスだった日々  その6

 
 
 
   「もっと、前やぁ」

       パカーン。

    大きく上がったセンター・フライ。
   楽勝で落下地点に入る。

    余裕しゃくしゃくで捕球し、ゆったりと返球する。
   そこで、一喝がとんだ。

    「ヘーイ、ボールは早よう、内野に帰そな」

    センターの怠慢プレイに、ショートから厳しい指摘の
   声が上がった。

    そうだった、外野はボールを取ったら、一刻も早く
   内野に返さねば。

    
    ランナーがいる場合、いくらベースを固めていても
   肝心のボールがなければアウトに出来ない。
    外野がボールを握っている限り、ランナーは好き勝手に
   塁上を走りまわれる。
    素人野球ジャッカスの守備でも、ときおりは、こんな風に
   基本に忠実な厳しいプレイが行われていた。

    あの時は、本当にそうだと思った。
    外野手は、いち早くボールと捕まえ、間髪を入れず内野に返し、
   ランナーの動きを最小限に抑えなければ。

    人の注意を素直に聞けていた頃。
   あれは一体、いくつの時だったのだろう? 

    
    ある日の試合中。  レフトを守っていた花尾君から、

    「ヘーイ、センター、もっと前やぁー」

    と言われて、むっとした。

    明らかに自分の守備位置が、その時の状況や、
   体力から見て不適切だったのに。
 

    人の注意を、一体いつから素直に受け入れられなく
   なったんだろう? 

    今になって思えば。  ジャッカスでプレイしている中で
   数少ない、腹立たしく情けない、ちょっぴりいやな
   思い出のひとつです。  

   みんなは、そんな思い出は有りませんか?
    

      だけど、まぁ、それだけ年いったんでしょうなぁ、
                     はっ、はっ、はっ。