連続短編小説   それゆけジャッカス
  その28    「ジャッカス、北北東に進路をとれ パートZ」

 
 
    札幌での宿泊先はユース・ホステル。  ここでもミーティ
   ングと称される宴会が催された。  ヘルパーと呼ばれる
   人たちが、宿泊客を巻き込んで宴会芸を繰り広げる。
   宿舎独自の趣向を凝らし、明るいひとときを過ごす。
   結構、結構、我々も楽しませてもらいました。  ただし、
   断固として言わしてもらいますけど、いまだったら
   ジャッカスの飲会の方が、はるかにレベルが高く面白い。
   持ち込み可、チャージなし。  歌有り、踊り有り、手品
   有りのなんでもあり。  絶対に笑える、請合います。
   一度おいで下さい。  ただし、半日以上続くので、
   参加したい人は覚悟しておくように。

    まあ、我々の宴会はさておき。  このユースで、なんと
   女の子・グループと知り合いになった。  雑談し、写真を
   撮る。  筋金入りのおくて集団・ジャッカスにとっては、
   左中間を抜くタイムリー・ツーベース。  上出来、感激、
   めでたい、めでたい。  なんでも明石だか、姫路から
   来たとの事。
    
    「北海道まで来て、なぁんも、近所の子と
     知り合いになってもなぁ」

   などと、身分をわきまえぬふとどきなやつがいて、結局、
   その場限りの出逢いとなってしまった。  なんてやつだ。
   おかげで、その後一回たりとも、異性とのコンタクトが
   なかったではないか。  ばちあたりなやつめ、
   犬にでも噛まれて泣いてしまえ。

    千載一遇のチャンスを逃したとも知らず、うきうきと
   ジャッカスは旅を続ける。  この頃から、我々の中に
   炎のような芸術的表現力が芽生え出した。

    「ふつうに写真とっても、おもろーないで」

    「なんか、芸せーやぁ」

   記念写真に収まるメンバーに、ポーズの注文を
   つけ始めた。  そんな時、行きついたのが
   大倉山シャンテ。  スキーのジャンプ台を見つめ、
   にっこり笑う彼らの目。  もう、誰にも止められない。

    ジャンプ台に登るは、滑降の真似はするは、飛び降
   りるは、草はかぶるは、手当たり次第の大騒ぎ。

    ようやくネタが尽きて、次なる場所へと移動を
   始めるジャッカスを見送りながら、

    「わし、これでも昔、日の丸飛行隊が大空へ
     飛び出した、オリンピックの舞台なんやでぇ」

   と、ジャンプ台がため息ついて言ったとか。

        もうちょっと、歴史を重んじろよな、ジャッカス。