連続短編小説  それゆけジャッカス
   その27   「ジャッカス、北北東に進路をとれ パートY」

 
 

     2日目も宿泊地に着いた頃には日が暮れていた。
    支笏湖畔への道は、うっそうとした林の中で、暗くなってから
    走るのは気味が悪かった。  どうしていつも遅くなるまで、
    遊んでいるのか、本当に元気なジャッカスだ。  あり余る
    元気で、その夜、彼らがなにをしたかは、パートVに書いた
    とおり。  たまには、おとなしく寝ろよな。

     明けて3日目。  一行は札幌の街へと進撃する。
    北海道ののどかさに、田舎者レベルをパワー・アップさせた
    ジャッカス・コンボイ。  果たして市街地を走れるのか?
    と言ってる間に、岩本・ギャランが交差点右折で反対車線に
    突っ込んでゆく。

     「おおぃ、ここは6車線。 そこは対向車線やぞぉ」

    危うく、難を逃れる。  さすがに札幌ともなると、我々に
    とっては大都会。  そうそうに車から降りる。

     ここで2班にわかれ、市街観光に繰り出した。  かたや、
    岩本、高須、高部、神吉の知性派組。  こなた、オッチャン
    矢ノ川、テッチャン、中谷の野性派組。  的確に
    観光スポットを捉えてゆく前者に対し、後者は感性の
    ひらめきにしたがって行動する。 

     「札幌やねんから、やっぱ、ラーメン食べな
      あかんのちゃうん?」

     「あそこに中華料理店あるでぇ」

     「ほっ、ほっ。 そこで、ええやん」

    確かに、札幌のラーメンには違いない。

     「北海道大学って、ここかぁ。 
      ポプラ並木ゆうても、ふつうの道やん」

     「おっ、なにか銅像があるでぇ」

     「それ、何とか博士とちゃうん? 写真、とろーでぇ」

    それは学校長の胸像ではないのか?

     「大通り公園ちゅうのは、人がいっぱいやな」

     「おっ、変わったモニュメントがあるで、みんなで
      真似して写真とろー」 

    ただの公園の飾りやろっちゅうねん、それは。

    知性派、野性派。  どちらが正しい観光客の姿? と
    問うなかれ。   どっちもとっても楽しかったのだから。

     その後、集結したジャッカスはビール園へとなだれ込む。
    ジンギスカンで舌鼓、ジョッキ数杯でハイテンション。
    ある者は木にとまり、またある者は踊りだす。 誰もが
    みんな千鳥足、芝生に寝転びごきげんさん。

     やがては酒飲みおやじの集団と化すジャッカス。 
    そんな行く末を知ってか知らずか、かわいらしく
    酔っ払う若者たちを包んで、
                 
                 札幌の夜が優しく更けてゆく。