連続短編小説  それゆけジャッカス
   その24   「ジャッカス、北北東に進路を取れ。パートV」

 

      フェリー乗務員の緊張をよそに、騒ぎ疲れて眠る
     ジャッカス。  無事に二晩目の夜を越えて、船は
     小樽へと到着した。  これからはいよいよ我々の
     車のタイヤが、そして自身の足が北海道を掴まえて
     前進するのだ。

      心構えは凛々しいが、そこは勝って知らない他人の
     町。  ジャッカス・コンボイは右往左往。 小樽の町を
     ぐるぐる廻り、積丹半島で行き止まり。  だけど、
     車は快調、天気も上々、急ぐ旅でもありゃしない。
     あっちで写真、 こっちで道草、北海道はでっかいどー
     オッチャンの頭もでっかいぞ―。  粋なジョークが
     飛び出せば、もはやそこはジャッカス・ワールド。
     お気楽なたびの始まり、始まり―。
     
      近所迷惑顧みず、旅の恥をかきつづけ、やって
     きました支笏湖へ。 北海道、最初の夜をそこで
     迎えるのだ。  贅沢ばかりが旅じゃぁない、
     野宿は若者の特権さ、とばかり、野営の準備にかかる。
     実はこの旅、正直に言えば、半分くらいしか宿を
     とってない。  予算の都合とその日の気分、お気楽な
     旅は、お気楽な計画に支えられている。

      大半が車で、高須は首尾良くテントを用意する。
     いよいよ寝るかとなったが、興奮と慣れぬ車のシート
     とが重なって、なかなか寝付けない。

      「車のシートっちゅうのは意外と寝られへんねんなぁ」

      「昼間、走ってるときは助手席であんなに眠たいのに」

      「そうや、走っとったら、寝つけるんとちゃうか?」

     ジャッカス得意の、訳わからんことしいグループが
     動き出す。

      「矢ノ川、ちょっと車、走らしてんか?」

      「よっしゃ、眠たなったら、代わってや」

     その夜。  怪しげな車が支笏湖畔を当てもなく、
     ぐるぐる走りまわった。 

      あくる朝、 ほとんどみんな、寝ぼけ顔。
     やはり、あの試みは失敗に終わったようだ。
               
                 ジャッカスの旅は、まだまだ続く。