連続短編小説  それゆけジャッカス
   その23    「ジャッカス、北北東に進路を取れ。パートU」

     


     目覚めると、そこは日本海の真っ只中であった。

     「きれいやなぁ」

     「海は広いなぁ」

     と感動していたジャッカスが、やがて長旅に退屈するのは
    皆さんの期待通りである。  

     「おおい、ここ、何やろ?」

     「こっち、来て―ん、サウナがあるでぇ」

     「こんなとこでバンドが演奏するンやろか?」

     もう、あっちこっち、うろうろするは、触りたおすは
    フェリー乗務員は気が気でない。 

     あげくのはてに甲板でキャッチボールをはじめ、
    ことごとくボールを海に落としたのを船が狭いせいにし、
    なおも、余した力で、体育ルームを借りてバスケットボールを
    はじめた。  

     旅の始まり、それも船の中で、そこまで真剣にやるか?
    というぐらい大汗かいて遊んでも、まだ足りない。

     「おおーい、見て―ン。  おれら船から
      落ちそうやね?ん」

     と、オッチャンが手すりから乗り出すやら、もう、野放しの
    幼稚園児みたい。
     
     
     「このままでは身が、もたーん」

     「なんとしても、無事に小樽に送り届けるんだ」

     「しかし、彼らを北海道に上陸させていいんですか?」

     と、真顔で話し合う、フェリー乗務員の心配をよそに
    ごっきげんさんで旅を続けるジャッカスを乗せて
 
     2晩目の夜へと、フェリーは進む。