連続短編小説  それゆけジャッカス
   その22     「ジャッカス、北北東に進路を取れ」



     野球を愛するジャッカス。  しかし、全員が二十歳
    そこそこの男の子。  野球ばかりが人生ではない。
    旅行なんかもいいんじゃない?  ここらで、いっちょう、
    どっかへいこうとなった。  そうと決まれば、話は早い。
     岩本がユース・ホステルを手配する、オッチャンが、
    フェリーの予約をする、テッチャンが車の洗車をする。
    矢ノ川が、キャぁー、キャぁー、言って喜ぶ。  瞬く間に
    旅行の手はずが整う。

     車は、オッチャンのカリ―ナ、岩本のギャラン、
    似合わないのに、オレンジのホイールを履いた
    テッチャンのセリカ。  野郎、9人が各車に散らばり、
    いざ、出発。  北へ、北へと車は向かい、天橋立で
    一休み。 その後、目的の場所へとたどり着いた。

     さぁー、これからが、本当の旅だ。  帰りたいやつは
    今のうちに言ってくれ。  誰も責めたりはしない。
    そうか、みんな、その気だな?  よーし、それじゃぁ、
    ジャッカスの船出だ。  

     一同、一糸乱れぬ動きで車に飛び込み、これからの
    運命を託す船へと乗り込む。
   
 

     「波は荒いが、船出にはちょうどいい。」

     「テッチャン、いかりを上げなっ」

     「岡田君、帆を張れっ、全開だぞ。」

     「神吉、前の見張りは頼んだぜ」

     漆黒の闇が包む海へと、ゆっくりと船が動き出す。
    見送る女もいるにはいるが、しばしの別れだ、
    泣くんじゃぁないぜ。  これがジャッカスの心意気。

     やがて、沖に出た船は、ゆっくりと舳先を目的地へと
    向ける。  どんな冒険が、俺たちを待っているのか?
    期待と不安が入り混じる。  目指すは憧れの北海道。

     「よーし、港を出た。 北北東に進路を取れ」

     のりに乗るジャッカスの勢いとは裏腹に

         一同を乗せた新日本海フェリーは
         ぼちぼちと、北海道へと向かう。