奥村哲郎、通称 「てっちゃん。」 彼はデッカクて力が強い。 チー ムの面々に、人ごみの中で目印になる、家の屋根掃除にはしごが 要らない、たんぼにはまった車を素手で引きづり出してくれるなどと 色々重宝されるくらいの化け物ぶりである。 おまけに顔がいかつい、 その上になんと似合わないサングラスまでかけている。 こんな風貌 なのでたいていの人は彼を見て少しビビる。 その昔、車に乗っていて ヤンキ?兄チャンにからまれた時、窓越しにちらりと一べつしただけで 追っ払ったと言う伝説を持っている。 しかし、その時、しっかりとドア?ロックをしていたという事実を知る 人はあまりいない。 そう、彼は見かけによらずおとなしい。 さらに 見かけによらずからだが弱い。 練習中、打球が体にあたろうもん なら、顔をしかめる、うずくまる、倒れこむ、立ちあがってこない。やっ とおさまったと思ったらびっこをひく。 軟球でどうやったらあそこまで ダメージを受けられるのであろうか? 弱いのは何も外からのダメージだけではない。 ジャッカスが小豆 島へキャンプに行ったとき。 遊びすぎて日もとっぷりと暮れ、晩飯に する頃には焼肉の焼き具合が見えなかった。 段取り良く懐中電灯を 準備していた彼は、自分の用意周到さに酔いしれ喜色満面で 「この肉、 OKっ」 などと検査役をやっていた。 が、翌日、腹痛を起こしたのは予想通 り見かけによらない彼一人であった。 しかし、素人軍団ジャッカスとしては得点力アップのためにチームの 持つ能力を最大限に活用しなければならない。 彼の「見かけ」を捨て ておくわけには断じていかない。 いっけん無謀とも思えるこの賭けに 敢えて挑戦するのだ。 はたして、この見かけに惑わされ、ビビったピッチャーに彼の幻の一 発が炸裂するのか? それとも、デッドボール一球で二度と立ち上がる ことのない4番打者を見て 「 このチーム、 スカなんちゃうん?」 と、見すかされるのか? いちかばちかの勝負だ。 打てっ 見かけの4番、 ファースト奥村。 |