猛練習に明け暮れるジャッカスにとうとうユニフォームが
出来た。
市の運営する草野球連盟に参加するのが
目的だったので、何度かのミーティングを重ねデザインを
決めて発注していたのだ。
みんな、キャッキャッ言って喜んだ。 そのいでたちは、
緑の帽子とソックス、クリーム色の上着とズボン。
胸にはJACKASSのネームが入り、帽子にはJのマークが
記されている。 なぜかアンダーシャツと帽子のひさしは
オレンジ色。
「カッコええやン。 きれいやん」
と言う本人たちの思いが、
「むっちゃ、かわいいんちゃうん」
に変わるのにたいして時間はかからなかった。
プロ野球でも試合で負けがこんでくるとユニフォームを
変えたがる。 ジャッカスのユニフォームはその後、 3度の
マイナーチェンジと2度のフルモデルチェンジを重ね、
現在に至る。
服装に気を使うあたり、なかなかおしゃれだ。
とにもかくにもユニフォームが揃い、俄然チームらしくなった。
いよいよ練習試合かというと意外な落とし穴がある。
バッターは打った後、どこを目標に走るか?
打球を受けた野手は どこに向かってボールを投げるか?
そお、ベースが要るのだ。 地面に足で四角を描いただ
け ではあまりにもさびしい。
ボールは? みんながどっかで拾ってきたものでは
あまりにもつるつるだ。 中には犬の歯型があるもの
まである。
バットは? 一本、二本じゃ素振りも出来ない、まして、
ジャイアンツのマーク入りはちょっとまずかろう。
グラブは自前ですむけれど、キャッチャーぐらいはミットを
持たしてやらんとかわいそうだ。 オッチャンのストレートで
怪我するやつなんか、おらんと思うけど、一応キャッチャー
マスクも用意しなければいけないだろう。
公式戦に限っていえばキャッチャーはヘルメットと
レガースをしなければいけない。 バッターもヘルメットが
要る。 なんとランナーまでかぶらなければいけない。 もしも
満塁になって、ヘルメットが足りないとカッコ悪いから
5個は買っておこう。
さらにその上とてつもない大物がいる。 バックネットだ。
河川敷グラウンドあたりでは本設がない。 暴投やパス
ボールの多い草野球では必需品だ。
大小織り交ぜて、いろんな物がいる。 しかたない部費を
集める事にしょう。 ところが女と金に縁のないジャッカスの
面々。 滞納者続出。 中には半年分を一度にもって
いかれる強者もいた。
部費の管理を一手に引き受けていた矢ノ川さゆりさん、
本当に大変だったでしょう。 ひょっとしたらベースの
一個や二個はあなたの家の財産かもしれないよ。
何? そんなもん要らんから、はよ先月分払え?
ごもっともです。
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