連続短編小説  それゆけジャッカス

その15  「宿命のライバル その名は」


     初練習試合を無事に終えたジャッカス。 少しずつ
    ではあるが、練習相手が増えてきた。

     森亀イーグルス。 われわれの高校の同窓生が何人か
    所属する。 森亀酒店の職員が中心のチーム。 平均
    年齢はジャッカスと同じくらい。 エースの西口は体も
    大きく、右オーバースローの本格派。 外野を守っていた
    伊藤君は時折ジャッカスの試合に助っ人に来てくれた。 
    ジャッカス同様、野球経験者はいないが、メンバーの
    基礎体力、運動センスはジャッカスを上回る。

     瀬戸。  オッチャンが家業の関係から見つけてきた。
    おっさん主体のチーム。 爆発的な力はないが、経験と
    貫禄にものを言わす。 試合巧者で、年のわりにスキの
    ない野球をする。  奔放な野球が身上のジャッカスに
    とっては苦手なタイプ。

     ご存知、ファーマーズ。 ジャッカスにつけられた黒星に
    いたく反省したのか、基礎練習とメンバー補強に力を入れ
    いまや、ジャッカスに一歩も二歩も水をあける。

     川原で知り合った中学生の三人組。 ピッチャーの子は
    肘の痛みをこらえつつジャッカスを完封。

     野球を愛するジャッカス。 勝ち負けなどにはこだわら
    ないが、たまには勝たねば笑われる。

     「おんなしチームばっかりとやっていても
      おもしろないし。 新しい相手を探そうや」

     「そうや、若いチームにも胸を貸したらないかん」

     と、手前勝手な主義を貫く。

     ある日、練習試合が終わり、いつもの様に帰り支度を
    している時、同じように着替えているチームを見つけた。
    類は友を呼び、狼は狼を呼ぶ。 クリーム色のユニ
    フォームに赤い帽子。 見るからに新米チームだ。
    ジャッカスは意を決して声をかけた。

     「あのう、われわれ素人野球で弱いんですけど
      よかったら練習試合、相手してもらえませんか」

     にらんだとおり、相手は結成間もないチーム。
    初めての人に声をかけられ、びっくりしながらも

     「僕らでよかったら、試合してください。
      練習試合相手に困っていたところなんです」

     これなら相手にとって不足はない。 全員、心の中で
    こう叫んだ。 

     「勝てる相手は、弱いうちにたたくんや」
 
     こうして、ジャッカスはその後、宿命のライバルとなる
    チームに出会った。

     その名は 「パンプキンズ」

     「かぼちゃ」 になら、負けるわけがない。