連続短編小説  それゆけジャッカス

その16  「公式戦デビュー」


     ついに、ジャッカス公式戦デビューの日がやってきた。
    我が町の草野球連盟は 「B」 と 「C」 に分かれており
    「B」 は、神鋼加古川、市水道局、オークラ輸送機etcが
    所属する。  ここは経験者ぞろいの本格的なところで
    われわれからすると小学生とメジャーリーガーくらいの
    差がある。  「A」 も有ったような気がするが、こうなると
    ほとんど別次元の話なので、さだかに覚えていない。
    とにかく 「B」 はジャッカスなどまるでお呼びでない
    リーグだ。  こっちだって呼ばれても行きたくなんか
    ない。  こわい。
   
     一方、「C」 は参加資格として、市内在住もしくは
    市内の職場に勤めている者よりなるチームと定め
    られているだけ。  これならいろんなチームが参
    加可能だ。  ジャッカスが申し込んでも怒られない。
     年会費だか、大会参加費を払い参加する。 市長
    杯争奪戦、体育会々会長旗争奪戦とか銘打った大会が
    年に3、4回催される。  大会毎に申し込みをすると
    抽選会が行われ、後日、試合日と場所の連絡があり
    いよいよ試合開始となる。

     少し話が変わるが、抽選会で思い出した。  ジャッ
    カスの助っ人 「渡辺君」 こと 「ナベさん」、 彼の
    登場はこの頃ではなかったか?  抽選会への出席や
    グラウンドの予約など、裏方役をずいぶんこなしてくれた。
    感謝しよう。  彼は特技 「卵回し」 を持っている。
    口のなかで卵を回すという荒業だが試合に役立った事は
    まだない。  同様に彼が試合に役立った事もまだない。
    どうしても、どうしても人数が足りない時に彼を呼ぶ。
    だから、彼はジャッカスでは 「脅威のスーパーサブ」とか
    「謎のリーサルウェポン」 として位置付けされる。  
    こんな恐ろしい人物は出来るだけ試合には参加しない
    ほうが安全だ。

     当日、試合は 「長楽寺」 というグラウンドで行われた。
    メンバー表を交換、ホームベースを挟んで両チームが
    挨拶を交わし、いよいよプレーボールの声がかかった。
    ところがジャッカスはそのとたん、全員、金縛りにあった。
    審判がつくとあんなにも緊張するものなのか。  地に
    足がつかない。  ひざが震える。ボールが手に
    つかない。  さらに、審判は厳しく

     「チェンジの際は全力疾走して」

     「次打者は早くウェイティングサークルについて」

     「コーチャーズボックスに人がいない。
      なにをやってるんだ」

     と、矢継ぎ早に注意を発する。  内野はボロボロ。
    外野はボール・カウントはおろか、アウト・カウントまで
    わからなくなる。  頼みのオッチャンもボークを取られ
    セットポジションの仕方を指導される始末。  あれよ
    あれよという間に試合は進み、気が付いたらゲーム
    セット。  相手チームと試合をする前に、審判に
    負けてしまった。

     ジャッカスの公式戦デビューは、ちょっぴり厳しい
    結果となった。