連続短編小説  それゆけジャッカス
その17   「困った時は」

 

    結果はともかく念願の公式戦デビューを果たした
   ジャッカス。 その後も少しずつ公式戦の出場回数を
   重ねていった。 同時にグラウンドが確保できた日は
   おなじみのチームと調整して出来るだけ練習試合を
   するよう心がけた。

    ところが試合数が増えてくるとレギュラーの中に
   どうしても都合のつかないものが出てくる。 やれ、
   草ひきだぁ、稲刈りだぁ、消防の集まりだと欠員が
   出てくる。 えー若いもんが家の用事ばっかりやのうて
   たまにはデートとか言って休めよ。 何? そういう
   おまえこそほとんど全試合来てたやないか?
   うるさい、皆勤賞はテッチャンやないか・・・・・・・
   
    仲間割れはこのへんにして、実際、結成時の
   メンバーだけでは試合が出来なくなってきた。そこで
   応援のメンバーを呼ぶことになるのだが、彼らの
   発掘はほとんどがオッチャンと矢ノ川の力による。
   勝手もんの集まりジャッカスの人数集めをいってに
   引き受けていたのだからまったく頭が下がる。
   その苦労がいかなるものかは、次のエピソードで
   容易に想像できるだろう。

    ある公式戦の日、試合開始直前になっても
   レギュラーの一人が現れない。 まさかと思うが、
   念の為と、自宅に電話を入れてみた。 数度の
   呼び出し音の後、電話口に出たのは紛れもない
   本人の声。

    「なんで、おまえがこの電話に出るんやぁ」

    集合していたメンバーは怒りを超えてあきれた。
   これから、やつには集合時間を一時間早く伝えて
   おこう。

    過ぎた事だから、もう、その男の名は伏せておくが
   ポジションはキャッチャーで、 「カ」、 「ン」、 「キ」
   の3文字で構成される苗字の男とだけ記しておこう。

    レギュラーの都合が良ければそちらを優先するので
   応援の人にはずいぶんと、無理なお願いではあったが
   多くの人がこころよく力を貸してくれた。 こうして
   ジャッカスに準レギュラーなるグループが形成され
   いつしか人は、彼らをこう呼ぶようになった。

    「ジャッカスの助っ人軍団」