連続短編小説  それゆけジャッカス 
   
その12  「地獄の百本ノック」

    グラウンド確保も要領を得、ますます練習に熱が入る
   我らジャッカス。しかし、闇雲にグラウンドを走り回っている
   ばかりでは脳がない。 
   練習方法を考えた。 やはり、野球は守備が第一。
   当面は守備力のアップを目指そう。 

    各人がポジションに散りシートノックを受ける。
   ノッカーはピッチャー兼監督のオッチャン。
   ファースト、テッチャンから始まり内野、外野へと順にノックを
   浴びせる。 一人につき7  ?8球。
   受けたらすばやく送球する。 それもサードからファースト、
   ショートからセカンドへと、あらゆる場面を想定して
   守備練習を繰り返す。 しかし、口惜しいが、最初から
   そうは問屋がおろさない。 フライには追いつけず、
   ゴロはトンネル、投げれば遥かかなたに大暴投。 

    「矢ノ川、どこほっとんねん」

    「高部、どじょうすくいはもうええどー」

    「中谷、性格といっしょで返球もまがっとるぞぉ」

    「テッチャン、目にごみが入ったぐらいで倒れるなー」
    
    「高須、サボるなー」

    「神吉、勝手口はそっちやない?」

    「岩本、帰るなぁ、パチンコ屋はまだ開いてない」

    「岡田君、どこやぁー」

    問題、続出だ。

   しかし、元気がとりえのジャッカス。 そう簡単にはあきらめない。

    「ヘーイ、もういっちょう、もういっちょう。」

   
    なかなかノックは終わらない。 夕日が西に沈む頃、
    額の汗が気持ち良い。今日はこの位にしょうか?
    オッチャンがそう言う。 まだまだ余裕のジャッカスだが、
    ローマは一日にしてならず。 焦りは禁物。
    こうして練習が終わる。

   えっ、ちょっと待て? 気持ちが良いのはいいが、
   一人7?8球のノックを順番に受けて、そう簡単に
   百本ノックになるわけがない?
   いやいや、チームメイトを相手にして一人でバットを
   振りつづけたオッチャン。
   彼が打ったノックは毎回、ゆうに百本を越える。

    
     ジャッカス名物、 「地獄の百本ノック」

     オッチャンにはつらかっただろう。