ジャッカスの野球レベルは低い。キャッチボールをしていて 相手の捕れない球がいくと 「ごめーん。」である。小学生の 下手なバトミントン風景をイメージしてもらうと良いだろう。 そんな中でこの男だけは野球センスに長けている。何故他の チームに入らなかったのか,ジャッカス入部は彼の野球人生を 大きく変えてしまったであろう。 体躯体形は漫画ドカベン、明訓高校の里中君をイメージして もらえばよろしい。その体格で2番の打順という事からも想像で きるように彼のプレーには抜け目がない。 相手ピッチャーの良し悪しにかかわらずなんとしてでもバットに ボールを当てるねちっこさ、出塁したら相手ピッチャーのわずかな 隙をついて次の累を奪ってしまういやらしさ、相手チームにとって 彼ほど嫌なタイプはいないだろう。 したがって当然の如く我がチーム内でも嫌われている。 「だって岩本さんたらこずるいんだモーん。」 というのが大方のチームメイトの彼に対する評価である。 ある時,こんなプレーがあった。ワンアウトでランナー3累に岩本。 ピッチャーの投球がボールと判定され不満げにキャッチャーがボールを ピッチャーに投げ返したその瞬間、何と岩本は本塁に突っ込んだのである。 ボールを受けたピッチャーが慌てて送球したが時既におそし、ホームスチール である。 チームメイトは大喜びで岩本をベンチに迎え入れ、全員声をそろえてこう言った。 「ずっる?。」 これがジャッカスの曲者 「2番 ショート 岩本」である。 追記 この作品の中で使われている表現が 「ねちっこさ」 → 「しぶとさ」 「いやらしさ」 → 「頭の良さ」 「嫌われている」→ 「尊敬されている」 「こずるい」 → 「細かなところまで気のつく繊細さ」 筆者の彼に対する尊敬とねたみの意をこめて 置き換えられているのは言うまでもない。 |