何事もはじめから上手と言うわけにはいかない。 天才の
集まりならいざ知らずわれわれは素人軍団ジャッカスである。
いきなり公式戦に出場する度胸はない。 まずは練習だ。
それには場所が要る。 いくらなんでも小学生の三角ベース
ではないのだから、それなりの広さがいる。 ということで
河川敷のグラウンドがもっぱら練習場所となった。
幸いな事にわれわれの町の河川敷は市によって整備され、
4,5面の野球グラウンドがとれる。 悪いところは野っぱらだが、
良いところは腰掛けていどとはいえ、一応ベンチも有る。
運が良ければ、そこが空いていたりもする。 ところが当然と
言えばそうなのだが、ここは使用許可が要る。 当初、
そんな事とは露とも知らぬジャッカスは、後からきたチームに
「あんたら、許可証持ってんのん? のいてんか」
と、小ばかにされつつ追っ払われる。 ひどい時には転々と
グラウンドを追われ、最後はバイパス道路の橋の下ということも
有った。 許可証持ちチームが帰るまでそこで耐えるのだ。
後で知ったのだが、このグラウンドの使用許可は市役所、
緑地公園課というところで貰える。 ところが使用日の一ヶ月くらい
前の日から受付が開始される決まりで、たいてい、その日は平日と
なる。 よそのチームは奥さんやら、彼女やらが手続きに行くのだが、
気はやさしくて、かいしょなしの我らジャッカスが、これを手にする
可能性は低い。
となれば唯一とりえの元気さにものをいわすしかない。 グラウンドの
使用時間が終わる頃に集合し、他チームが帰った後で練習する。
夏場なら、日はまだ長い。 練習、練習、猛練習。 そんな我ら
ジャッカスを草野球の神様がいつまでも見捨てておくわけがない。
ある日、憧れのグラウンド使用許可証が手に入った。
一同、胸を張り、許可証を天高くかざし、わざと時間に遅れて
グラウンドに行ったのは言うまでもない。
「あんたら、許可証持ってんのん? のいてんか」
さあ、ジャッカスのリベンジだ。
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