昭和51年(1976年) 神戸新聞 朝刊ヨリ

ピンクだった火星の空

パサデナのジェット推進研究所が発表した

火星の空はピンク色。当初ブルーだといわれていたが、

これはカラー画像信号を再生する際・色調の補正を誤ったため。

地表の土嬢は大部分が赤みを帯びた細かい粒子状物質からできている。

写真下部にたくさんある石の周りの土には

黒または青黒色の小さな班点が見られる。

地平線の近くには黒色や青黒色の岩石が固まって転がっている。

バイキング1号のカメラから地平線までの距離は約3`。

写真の視野の広さは67度。

(AP=共同)

(3面に関連記事)

以下、同新聞3面記事

゛火星の素膚を゛お色直し"

カラー写真訂正 「青い空」に一瞬ヒヤリ

米のジェット推進研究所

【パサデナニ十二日田辺共同特派員】

 カリフォルニア工科大ジェット推進研究所(JPL)は米太平洋岸夏時間二十一日夜(日本時間二十二日午後)、

二枚目の火星カラー写真を発表した。

 これは当初発表した初の火星表面カラー写真が、元来、ピンク色でなければならなかった空を、

同研究所側のミスによってライトブルーに焼き付けてしまったため、新たに空をピンク調に修正した写真を発表したものである。

 この間、米国の通信社が色調ミスのまま、一枚目の写真をいち早く全世界のマスコミに流したため、

訂正写真の発表でで大混乱となった。

 JPL当局者によると、ミスの原因は 

@ コンピューターに内蔵されたカラー信号を合成した際、信号が混乱した

A 合成の際微妙な色調補正を間違えたため色が全く違ってしまった

のどちらかとみられている。

 幸い、色が違ったのは空だけで、火星表面の全体の赤っぽい色調にはほとんど変わりがなかったが、

分秒を争うマスコミにとっては冷や汗ものの一幕だった。

 二回目に発表された正しい火星のカラー写真を見ると、赤い色彩が画面いっぱいに広がり、

赤カッ色あるいはレンガ色の砂ばくそのものだ。溶岩原の上にサラサラとした赤い砂が積もったような感じ。

手前に見えるやや大きな石は青灰色に彩られている。

地平線の下側から薄い緑色の筋模様が画面右手から左へ不規則な形を描いている。

空は、地平線近くがにじんだようなピンク色で上層にはわずかに空色がかった色調が残っている。

よく見ると白っぽい雲がたなびいているようにも感じられる。

 

最低気温は、零下86度に

火星表面のお天気

【パサデナニ十二日、田辺共同特派員】

「午後遅く吹いていた弱い東の風が真夜中には南東に変わった。

 最大風速は六・五b、最低気温は夜明け時で零下八六度、最高気温は同三〇度。気圧は七・七mで安定している」

 米太平洋岸夏時間二十一日午後十時半(日本時間二十二日午後三時半)、

バイキング1号が火星表面で行っている気象観測データが、気象観測主任のセイモア・ヘス博土から初めて発表された。

これはバイキング1号の着陸時から約二十時間にわたって観測した着陸地点のクリュセ平原低地の気象状況である。

ランダーの気象観測は着陸後から一日二十回の間隔で続けられている。

横腹から突き出た気象観機を広げ、気圧、気温、風速、風向などの基礎的な気象データを観測している。

 

 

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