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病害虫の予防と駆除

A.病害虫の診断

 1 害虫は、サインを読んで見分ける
 害虫の被害を診断する場合、害虫そのものが見つかればよいが、目につかない場合もしばしば。
被害部位と被害症状のサインで、害虫を見分ける。
 害虫は、大きさがl mm以下のものから数cmのものまでさまざまである。直接目に見えないほ
ど小さな害虫を判断する場合は、症状による診断でおおよその見当をつけてから、虫を探す。

【加害の仕方】
@葉、花、果実、茎、根などから養分を吸汁する害虫
A葉、花、果実、茎、根をかじる害虫
B葉、茎、果実の中に潜って加害する害虫
C根を食害して腐らせる害虫
D芽、葉、根などに虫こぶをつくる害虫
【加害部位】
a花、果実、芽、 b葉、茎、幹、 c地際部、 d地下部の根や地下茎

これら加害の仕方@〜Dと加害部位abcdを組み合わせると、害虫の種類を絞り込むことができる。
●葉、茎、蕃、果実や芽を吸汁加害する
 アブラムシ、コナジラミ、カイガラムシ、カメムシ、キジラミ、ョコバイ、グンバイムシ、
ハダニ、アザミウマ、ホコリダニ、フシダュなど
●葉や茎を食害する
 イモムシ、ケムシ、シャクトリムシ、イラムシ、ハマキムシ、ミノムシ、アオムシ、ョウト
ウムシ、ハスモンョトウなどガやチョウの幼虫、ハバチの幼虫、ゾウムシ、テントウムシダマ
シ、ハムシの成・幼虫、コガネムシの成虫、カタツムリやナメクジなど。
 庭木では、アメリカシロヒトリ、オビカレハ、モンクロシャチホコなど。
 幼虫がトンネル状に葉肉を食害するハモグリバエとハモグリガ。
●茎や幹を加害する
 茎に穴をあけるカミキリムシ、メイガの仲間、コウモリガ、ボクトウガ、スカシバ、キクイ
ムシ、タマムシ、ゾウムシなど。
 加害されると、草花や野菜では上部の茎や葉がしおれる。庭木や果樹では、おがくずのようなかすが幹の外に排出される。
●地下部(根)を加害する
 コガネムシやコメツキムシの幼虫、ネダュ、チビクロバネキノコバエ、センチュウ類など。
●芽、葉、根などに虫こぶや毛せんをつくる
 ネコブセンチュウ、フシダュ、ホコリダュ、アブラムシ、タマバエ、タマバチなど。






 2 病気は原因を確かめて対処する
 病気は害虫とは違い、病名を知ることは防除の第一段階である。病原はどんなものか、どのような方法で伝染するのかなど、病気の原因をよく確かめ、最も適切な対処法を選ぶ。

 【病気の種類】
 植物では一般に、伝染性の病気だけが病気とされる。その病原には糸状菌類、細菌類、ウイルス類の3つの種類があり、糸状菌類が圧倒的に多い。
●糸状菌類
 多細胞からなる微生物で、菌糸や胞子をつくり、野菜類や花き類では病原の8割以上、果樹類や植木類では9割以上を占める。
●細菌類(バクテリア類)
 1個の細胞からなる微生物で、好適な条件下では急激に増殖する。植物体に生じた傷口や気孔などの自然開口部から侵入する。野菜類や花き類では病原の約1割が、果樹類や植木類では根頭がん腫病などわずかな病気が該当する。
●ウイルス類
 本体が核たんぱく質でてきた粒子で、生きた細胞の中でのみ増殖する。虫の加害や農作業などでできた植物体の傷口から侵入する。病原に占める割合は、細菌類より少ない。

 【病気の伝染方法】
●風による伝染〔空気伝染、風媒伝染)

 病原菌胞子などが空中に浮遊したり、風(雨を伴う風を含む)に運ばれたりして伝染するもの。
周辺部のほか、かなり遠距離にまで伝染する。
 細菌病ではキャベツ黒腐れ病など、糸状菌病ではうどんこ病、べと病、疫病、さび病、灰色
かび病、斑点性病害など多くが該当する。
●雨による伝染(雨媒云染、水煤伝染)
 病原菌胞子などが雨のしぶぎで飛び散ったり、雨に溶けて病株の枝幹を流れて伝染するもの。
ごく近距離での伝染が多い。糸状菌病では枝枯れ病、胴枯れ病など。
●土中での伝染(土壌伝染)
 病株が枯死したあとも土中に病原菌が生ぎ残り、伝染源となる。新たに植えられた植物の根や地際部から侵入、発病し、連作障害の大きな原因となる。細菌病では根頭がん腫病、軟腐病など、糸状菌病では白絹病、紫紋羽病、白紋羽病、苗立ち枯れ性病害などが該当。
●昆虫による伝染(虫媒伝染)
 モザイク病(ウイルス病)の多くは病原ウイルスをもったアブラムシやアザミウマなどで伝染する。
すす病などは病原菌胞子がついた昆虫類によって広がる。
●種苗伝染
 タネ、苗木、球根類などに付着したり、組織内で生存し、これらの移動とともに広がるもの。
人間によって国内外に連ばれ、大規模な伝染が起こる。
●接触による伝染(汁液伝染)
 モザイク病は病汁液のついたナイフ、ハサミ、手などの接触で広がる。ラン類やトマトなどのモザイク病などが該当する。





3 病害虫防除のポイント
●薬剤防除
 ・対象病害虫に登録のある薬剤の使用
  (薬剤の選択については、農薬便覧や製品要覧等の参照、指導機関への問い合わせによる)
 ・日常の観察
 ・早期発見、初期防除
 ・殺菌剤は予防的に全面散布(定期散布) 殺虫剤は発生初期に部分散布(重点散布)
 ・散布は風のない朝方か夕方に
 ・葉の表裏にムラなくかける。霧は細かく。

●耕種的防除
 ・抵抗性・耐病性品種の栽培         ・つぎ木苗の栽培
 ・栽培時期の変更                ・輪作、間作の実行(連作を避ける)
 ・正しい肥培管理(チッソ過多の回避)     ・適正な栽培密度と通風
 ・健全な種苗の導入               ・罹病した株を放置しない(焼却処分)

●物理的防除
 ・病患部を早めに切り取り処分         ・早期に雑草の防除
 ・被覆栽培                    ・用土の消毒
 ・冬期に被宮部を除去             ・誘殺(フェロモン、メタアルデヒト≒粘着板利用など)
 ・捕殺                       ・光防除(黄色蛍光灯など)
 ・忌避資材の利用(シルバーポリフィフレムなど)

●生物的防除
 ・天敵の利用
 ・土壌中の菌相の改善
 ・生物農薬
   天敵昆虫(捕食性昆虫、寄生性昆虫などで、捕食性ダュ類も含む)
   天敵線虫(昆虫寄生性線虫、微生物捕食性線虫など)
   天敵微生物(細菌、糸状菌、ウイルス、原生動物など)
   その他生物由来物質(抗生物質、フェロモンなど)